ルモーリン

VUメーター用アッテネータを作りました

投稿:2012-08-27、更新:2012-10-13

今回は、依頼により電子工作を行いました。初めてのケースです。 ※公開について了承を頂いております。
niconicoの「歌ってみた」や「オリジナル曲」の依頼を請けて無償でミックスしている音響技師さんがいらっしゃいます。 ミックスの様子をニコニコ生放送で配信されているので、よく視聴しています。 ある日、その音響技師さんから「VUメーター用のアッテネータを作ってもらえないか?」と依頼がありました。 日頃ミックスを見学させてもらい勉強になっていますし、素人の私にプロからの依頼というのは名誉な事ですので請けました。 音響の専門学校へ通う方々がニコニコ生放送を見に来ても不思議はないのですけれど、実際には来てないようです。 プロがミックスしてるProToolsHDの操作画面をそのまま視聴できるなんて、ありえないから無理もありません。
希望は、こんな感じの物です。
  • タイプはパッシブ(アンプやバッファがない)
  • 減衰量は0dB、-2dB、-4dB、-6dB、-8dBの切替式
  • チャンネル数は2(ステレオ)
  • 各チャンネルの減衰量を微調整
  • 入力はキャノンのメス、出力はオス
  • 平衡型
聞き取り調査にて音源のインピーダンスが50Ω、VUメーターの入力インピーダンスが20kΩと分かり、それに基づいて抵抗値を計算します。 私が電卓を使った訳でなく、エクセルのリゾルバを利用、5段切替の各段の減衰量が目標値の1%以内に収まる抵抗値の組み合わせを決定させた訳です。 その抵抗値をE24系列1%の金属被膜抵抗2本で近似させて再計算し1%以内に収めました。 部品を集める際の最大の肝が「ロータリースイッチ」です。 電子制御全盛の昨今、4回路5接点のロータリースイッチは入手できません。 運良く4回路6接点が共立エレショップから販売されています。 6接点の場合は-10dBを追加しますので使用する抵抗が全部変更となり、抵抗値の計算からやり直しました(泣)。 ロータリースイッチが到着するまでは抵抗の購入を保留してじっと我慢の子。 入手したロータリースイッチで行けると判断してから抵抗を購入しました。 その他の部品は札幌のパーツ屋さん1軒に在庫、今回の製作でパーツ屋さんが業務向けの品揃えというのがよく分かりました。
回路図。 1チャンネル分を記載しています。 ノイトリックのキャノン型レセプタクル(ジャック)は、3ピンタイプの裏に4つの端子があります。
  1. GND
  2. Hot
  3. Cold
  4. シールド
4つ目のシールドはGNDと接続させる場合とそうでない場合があるらしいです。 接続する場合はケーブルのプラグでGNDとシールドを接続させるらしいです。 この辺りの話をきちんと記述しているサイトを見つけられなかったのが残念でした。 ケースをシールドの延長と考えて接続しました。アルミケースにハンダ付けできないため、圧着端子をケースにビス止めして接続してあります。

ご覧の環境ではインライン表示できません。ダウンロードしてください→回路図

部品表。 単価0円の部品は無償提供で、かわりに余った10mmスペーサー×6本は私の物(笑)

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音響技師さん向けレイアウト完成図。 これをケースに貼り付けて穴開けしますので1ミリ単位で正確に印刷できてるかチェック用のスケールを表示させました。 案の定、小さく印刷されてしまい、109%に拡大して許容範囲になりましたけれど、縦横で伸縮が違うのをどうにかして欲しいな。

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レイアウト設計図。 オブジェクトのプロパティ「印刷する」を適宜外して完成図を印刷しました。

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内部の様子。 内部の様子 前面パネル。 前面パネル 背面パネル。 背面パネル
2人ともツイッターのアカウントがあるので、経過報告と私のフォロワーさん方へのネタ出しを兼ねて、ツイッターで経過報告をしました。 それらをまとめましたので、ご覧ください。ツイート日時が記録されていますので製作ペースも把握できます。
VUメーター用アッテネータ製作 - Tabtter
テストしてもらった所、-2dBに切り替えるとVU計は-3dBを指示するそうです(滝汗)。 パッシブ型のアッテネータの宿命で、VU計の入力インピーダンスが違う場合に起きます。 微調整で下げる方向へ指示をずらせますから、切り替えを1段上げて指示を合わせることができて、首の皮一枚でつながりました。 VU計の入力インピーダンスを逆算すると10.6kΩでした。 強引に修正するなら、4箇所の3.368kΩに5.6kΩ1%を並列につけると-2dBはとりあえず合いますが、次の-4dBが-4.9dBまで減衰するので無理はいけませんね。
このページを作っていて思いつき、「SIFAM 10kΩ」で検索してみると衝撃の事実が(笑)。 上のブログの写真とステレオVUメータのMK-Vの写真をご覧ください。 仕様を読むと「入力インピーダンス:10kΩ(バランス)」orz
2012.10.13 こちらの記載についても音響技師さんから了承、 また写真の使用も許可いただきました。ありがとうございます。 後日、音響技師さんから連絡がありスカイプ上で綿密な打ち合わせ。 アッテネータの切替で正確に2dBステップを刻む方法を模索します。 結論は次の通り。
  1. VU計はインピーダンス10kΩなのでこれを見た目20kΩに変更する
  2. そのためにアッテネータの箱の中でHOT側、COLD側それぞれに抵抗を挿入してピッタリ20kΩにする
  3. これでアッテネータから見たインピーダンスが20kΩになり切替で2dBステップになる
  4. VU計に届く電圧が50%(-6dB)となるので、VU計内部の調整で+6dBに変更して帳尻を合わせる
  5. 結果、このアッテネータは入力インピーダンス10kΩ用、-6dB~-16dB切替アッテネータとする
実機で計測していただいた結果は次の通り。
  • ケースA: 入力-11.8dBFS 切替-6dB VU計0VU
  • ケースB: 入力-7.5dBFS 切替-10dB VU計0VU
それから、入力-20dBFSで切替0dB、VU計0VUとのことです。 ここでは0dBFSを1Vとみなして計算します。 ケースAで入力インピーダンスを計算すると、入力電圧が-11.8dBFS=0.257V →切替タップまでの直列抵抗=11.775kΩ →切替タップからの並列抵抗=28.837kΩ →並列抵抗に掛かる電圧=0VU=0.1V →直列抵抗に掛かる電圧=0.257V-0.1V=0.157V →直列抵抗を通る電流=0.157V÷11.775kΩ=13.3mA →並列抵抗とVU計の合成抵抗=0.1V÷13.3mA=7.50kΩ →VU計の入力抵抗=10.13kΩ

ケースBも同様に計算し、10.08kΩとなりました。挿入する抵抗は10kΩでよさそうです。
音響技師さんから報告のツイートがありました。
ご報告!10K追加でどのレンジもバッチリ完璧に2dBステップになりました!